「日常1」   作:首吊雅樂太





幸せだった 「おいアム、まだ残ってたのか」親友のジャックが笑いながら入ってくる。
「ああ。寺子屋の教えは楽しいからな」俺はジャックに笑顔で返す。
「お前、本当に勉強熱心だな。先生からも評価いいしよう」ジャックは感心するように頷く。
「ジャックが居眠りし過ぎなだけさ」本を閉じて立ち上がる。
「それより急げよ。シスター・モニカが待ってる」
「そうか。もう夕飯か」
俺は立ち上がるとジャックと明日の事で談笑しながら教会へ向かった。
あの頃は幸せだった。

変な夢を見た。昔の夢だ。俺がまだ村にいた頃の夢。
・・・。昔を思い出すのも良いが、今俺は銀鱗亭の一員。
ここのみんなが家族であり、仲間だ。
まぁ過去を蔑ろにするつもりはないけどな。
時間を見るとまだ遅い。今日は警備は非番だ。
食堂の方が騒がしい。俺も一応厨房を受け持ってるし少し手伝おう。

「あ、ますたぁ」部屋を出ると聞き慣れた声が呼び止める。
振り向くと、小柄な女の子が立っている。
俺のパートナーのスイだ。
「もう大丈夫なんですか?」彼女は心配した様子で右腕を見る。
その問い掛けに俺は頷く。
俺の右腕はちょっとした事故で無くなったがスイが爆発治療で治してくれた。
しかし腕が無くなったときより痛かった。なかなかアグレッシヴな治療法である。
だが俺の腕は元通りではなく、黒い物体になった。腕の形をしているが、人の腕ではない。
質感も人の肌と言うよりは、ツルツルした石に近い。難なく動かせるからまぁいいけど。
なんでこんな腕になったのかは分からない。でも彼女が折角治療してくれたんだ。
俺は文句を言うつもりはない。寧ろ感謝している。今度クッキーかなんか作ってあげよう。
「それよりお前こそ大丈夫か」俺もスイに問い掛ける。
あの治療でスイは魔力を使い切ってしまい、倒れた。
帰ってきて分かったのだが、彼女はドッペルゲンガーを使用していた上で
あのような莫大な魔力を使う治療を行った。俺のために。
凄くありがたかった。でも彼女には少し自分の心配もして欲しい。そんな気持ちもあった。
「はい!もうすっかり!」自分の言葉を証明するかのように彼女は跳ね回る。
「ん」俺は彼女の頭を撫でてやる。なんだろう、初めてやったから少し恥ずかしい。
スイの方も面食らったという感じで俺を凝視する。まぁ当然か。
「あれれ?もう良いの?」背後から明るい声がする。
「ん」振り返ると俺のドッペルゲンガーが居た。

こいつは俺と正反対の性質、外見を持つ。
女であり性格は明るい。眼帯も右眼ではなく左眼。武器は俺の細い太刀に対し大きなバスターソードだ。
だがこいつは俺だ。俺が孤独の内に生み出した影とでも言うべきか。それ故コイツは自立している。
一応ドッペルゲンガーだが、【シグ】という名前もある。俺が付けた。

「どうしたのアッちゃん小難しい顔して」シグがのぞき込んでくる。
しかめっ面をすると「ごめんごめん」と笑いながら厨房に戻っていく。
此処で一つ。アイツは俺と正反対の性質を持つと言った。
俺は料理が得意だ。その「正反対」となると・・・答えは一つだ。

「ぐあああああああああああ・・・・」客の一人が断末魔を上げ、卒倒する。
食堂がざわめく。俺は急いで客に駆け寄ると丸薬を飲ませた。
これは師匠に作り方を教わったモノで優れた薬品だ。
頭痛、腹痛、胃痛、花粉、風邪、熱、喉痛みと言ったあらゆる症状を回復させる事が出来る。
30個入りで695ゴールド。お求めはフレアロット商会または銀鱗亭食堂横売店までどうぞ。

先程言った「料理上手の正反対」つまりシグの料理は壊滅的に不味い。
というかアレは食べ物ではなく一種の兵器と言っても過言ではない。
しかも見た目が凄く美味そうなのがまた非道い。師匠風に言うなら「罠か・・・」である。
「これ!シグは皿洗いと言ったであろう!」我らが給仕長(仮)のハンナベルさんの叫ぶ声が聞こえる。
「ひえええええすみません!」シグの悲鳴も聞こえる。

・・・やはり此処での毎日が凄く楽しく感じる。
これが今の俺の日常だとシミジミ感じる。

「アムファルド、ニヤニヤしてないで手伝えぃ!」いつの間にかハンナベルさんの矛先が俺に向いていた。
なんだ、俺は知らん内に笑っていたようだ。
頷くと俺は厨房に入っていく。ここが新しい家。俺は此の何とも言えない
馬鹿みたいだけど楽しい日常が好きだ。

あとがきのような何か

  どうも。首吊雅樂太です。拙い文章ですがこんな感じで書いていこうと思います。
今後も目を通して頂ければ光栄の限りです。その上でツッコミなどを入れて頂ければ
ソレに応じる事が出来ると思いますので、沢山の意見・ダメ出しをお待ちしております。
お世話になってる銀鱗亭
アルバイト中フレアロット商会

勝手に出演:

大事な相棒:スイ
我らが給仕長(仮):ハンナベル=グラスドール
シグの犠牲となった客(オリジナルモブ)


ありがとうございました。




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