「第三節・再会B」   作:MUTUME





銀鱗亭の食堂は、いつも明るく賑やかだ。

 「それでさ!フォーティムさんったらすごいんだよ!ぼいーんだよぼいーん!」
 「ちょ、おまッ何言って!俺は別に!」
 「にゃはははは!」
 「ほんとに、すごかったです……」

 「ぼいーんと聞いて!ぎゃあああああああああああああああ」
 「ぼいーんって事は、もしかしてお尻の方も!ぎゃああああああああああああああああ」
 「すまん変態が騒がせた」
 
 「あのミュールさんとアラドさんが一瞬で大変な事に!アルモニカさんカッコいいです!」

 「そういえば、オルゴイに追い回されてる者もおったのぅ」
 「死ぬかと思った」
 「食われるかと思いました……」
 「ていうか飲まれた……」
 「お主らも大変だったんだの……」
 「妾には補給物資の中にそのオルゴイがあるように見えるのだが……?」
 「あ、それやったのクマさんだねー」
 「アムファルドさんも倒してたよ」
 「腕と引き換えにね!治しましたけど、ますたぁー無茶しすぎです!」
 「ほんとに大変だったんだの……」

 「そういえばモガミちゃんがワッショイ=サガワしたセウトはどうだった?」
 「……なかなか良い甲冑だったろう?」
 「え、あれ甲冑だったんですか……?水浴びに使っちゃいましたけど……」
 「そんな馬鹿な……」
 「ていうか着る必要の無い私に着せた時点で明らかに狙ってましたよね?」
 「そんなことは……」
 「いや!良い装備だったと思うぞぎゃあああああああああああああああ」
 「ああ!次回作も期待していrぎゃああああああああああああああああ」
 「すまん変態が邪魔をした」

 銀鱗亭に戻ったライテロイシュの耳に食堂から聞き間違えようも無い声が届いた。心が弛緩する。自然と笑みがこぼれる。
 声をかけようとして。
 「あ、おかえり兄さん!久し振り!」
 先手を取られた。
 「こっちの台詞だ!ネイテルイシュ!まったく心配させやがって……」
 頭をワシワシと撫でてやる。
 「これはしょうがないじゃん!って何でそんな笑ってるの?なんか気持ち悪いよ!?んんー?…お兄ちゃん、何かあった?」
 「ハハハ……なにもねぇよ?久し振りだから超嬉しいんだよ。ネイテ分(俺にだけ必要な栄養素)を補給してるから少し我慢してくれよー。よし回復の呪文を唱えよう……ヤバイオレノイモウトマジヤバイダキシメタイテヲダシタヤツコロスオヨメニナンテイカナイデ!」
 「私はそこまでじゃないけどなぁ。兄さんって意外と寂しがりだよね。ホントしょうがないなぁ。もー」

 「スルーした!?」
   「な、なぁ……二人はいつもこんなノリなのか?」
 「うん、兄さんはいつもこんなだよ。こういう冗談が好きなんだ。子供だよね」
 「いや、今のは…殆ど本心だと思うな…、ここまで来るとシスコンというより、もっと別の何かな気がする……」
   「ていうかネイテちゃん、兄の変態行為に慣れすぎじゃろ」

 (これセウトの事は絶対に言えないよね……チラッチラッ)
 「そういえばネイテちゃんもセウト着てたよね、どうだった?」
 「えッ何でばらしちゃうの…!?」
 「えっと……かなり恥ずかしいかな」
 「ああ、そういえばセウトっていったい何だ?そこかしこでセウトー!セウトー!と聞こえていて気になってたんだ」
 (見せたら絶対血を見る事になるよ!……チラッチラッ)
 「コレじゃの」
 「えッ何で見せちゃうの…!?」
 「ぶふぉッ(鼻血」
 「あはは兄さんえっちー」


   銀鱗亭の食堂はいつも明るく、賑やかだ。銀鱗亭に訪れた旅人は皆口を揃えてそう言うらしい。



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