「ネイテルイシュの日記」   作:MUTUME





 兄さんの下から離れて結構経った。
 最初はすぐ帰るつもりだったんだけど、戦争が始まって、森に逃げ込んで、銀鱗亭に泊まる事にして。さすがに疲れた。
 さてさて、ところで銀鱗亭はとても安全な場所みたい、この宿屋には竜の人が多いという話だ。
 とても綺麗なアルモニカさん、ちょっと見ただけでも慕われてるとわかるハンナベルさん、他の名前を知らない人も皆してすごいオーラを漂わせている。
 同じくらい変な人も多いみたいだけど。なんにせよ、賑やかなのは見ていて楽しい。
 戦場の真っ只中にあるから防衛もばっちりだ。
 エアリィさんっていう人は大きな男の人や、何かの達人らしい人たちをばったばったとなぎ倒してた。
 大きなグラサンをつけたアイ・ケーオさんも強いらしい。
 サボテンみたいな人もいた。きっとあれは砂漠の植物精霊だ。そんな精霊がいると噂を聞いたことがある。
 グリコさんとギーナさんはちょっと雰囲気が怖い。けどたぶん良い人だ。空気でわかる(私の種族は空気中の電気を感知して色々わかるのだ)。
 強い人が守ってくれると安心できる。昔みたいな事には、きっとならない。

 歌声が聞こえたから見に行ったら、片翼の女の子が歌っていた。
 声が震えていたので何か声をかけようかと思ったけど、先を越されてしまったから、こっそり戻った。優しい人も多いみたい。ますます安心できる。
 人の他にも、お店や施設が充実してた。フレアロット商会には便利そうなものが沢山あるみたいだから覚えておこう。
 そういえば兄さんは元気だろうか。心配してるだろうな。そろそろ尻尾抜けてそう。大丈夫かな。大丈夫だよね。
 うん、大丈夫。兄さんそこそこ強いし、しぶといもの。だから私も大丈夫。



目次へ戻る