「桜月」   作:匿名希望




その夜は確かに寝苦しかった。
旅先の慣れない場所ということもあったが、やはり先ほどの月見のことがあったからなのだろう。
腹が減ったと呻く相手に、ついつい食堂と同じ感覚で料理を作ってしまった。
調理時間10分。注文から20分内にお客にお届けする習慣は料理人ゆえか。おかげで眠気は飛んだ。
そのまま強引に寝る手もあったが。
下手に冴えた目をどうしようと言うことで、とりあえずトイレを借りることにする。
月が照らす廊下を歩いていると。
「……ふぁっ!」
そんな艶めいた声が聞こえた。
「?」
思わず首を傾げる。
空耳かと思っていると、ふと視線の先。
襖が僅かに開いている場所があることに気がついた。
耳を澄ませばそこから音が響いている。
目が冴えてトイレに向かっているのはこれに出会うためだったのか。
常識と好奇心が鬩ぎ合った末、俺はそっと襖の隙間を覗き込むことにした。
そこには――


「ぁ……んゃっ! やめ…っきゃ」
捲られたパジャマから覗く肌はすでに火照り、口に出す否定はどこか弱々しい。
昼間見た清楚な彼女からは想像ができない姿であった。
それに組み付くようにして一回り小さな者が絡みつく。
「なにも心配せんでいい……ほれ、身を任せろ」
「あむっ! ……んんっ!」
唇と唇が絡み合い、強引に舌が差し込まれかき回され唾液を吸われていく。
「じゅるっ……ぐちゅぢゅ…ずずず……」
「…んんぅ…むぅぅっ!」
それを跳ね除けようとする観緒の手に力は入っておらず、抵抗さえも消えた。
「ぷぁ……ふふ…気持ちいいじゃろう?」
ぐったりと荒い息を吐く観緒に、月見は口元の唾液を舐め取りながら言う。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ……ど、どうしてこんな、ことを」
息荒くも問いかける観緒。
月見はそれに笑いかける。
「なに、一宿一飯のお礼じゃ」
「そんなっ! 私はそんなこと望んでませっ」
詰め寄ろうとした体へ。
「――本当にそうかえ?」
そっと月見が絡み、耳元で呟いた。
「口付けだけで息を荒くし、少し体を弄るだけで火照ってもかえ?」
「――っ!?」
ぐじゅり、下着の上から湿った音が響く。
「もう、こんなになっておるのにのう…?」
一気に観緒の顔が真っ赤に染まる。
「やっ! そこはっ!!」
跳ね除けようとする手よりも早く。
「安心せい」
月見は下着の中へと手を滑り込ませていた。
ぐちゃぐちゅと手が動き、かき混ぜられる。
「恩人の操を奪うほどわしも鬼畜ではない」
「ひっ! あぅっ! やっ」
抵抗がまた弱くなったところで、するりと魔法のようにパジャマの下と下着が脱がされ。
その代わりのように月見が顔をよせる。
そしてまだ開ききっていない秘裂の上。
「目的は……ここじゃ」
「ひゃぅっ!?」
まだ皮を被った淫核へと、吸い付いた。
「んぁっ! ひ! あぅっ!」
「ちゅぷ……ちゅちゅっ」
皮を舐り舌で刺激し、舌でそっと皮を捲る。
「ぁ…ぁぁ……っ」
充血した淫核は唾液でテラテラと光り、それは―― 「少々大きいのう……ふふ…いやらしい証じゃ」
照準よりも少し大きめな淫核を指摘され、観緒は更に顔を赤くする。
「そ、そんなことっ」
紡ぎ出した否定の言葉も。
「大きいなら、こんなこともできるぞい?」
「ぴっ!?」
ちゅるりと口に淫核が吸い込まれることで封じられた。
まるで男性器にするかのように、ちゅぷちゅぷと淫核を唇で上下に扱いていく。
「あっ! あっ! あっ! あぁっ!!」
薄い唇の隙間からたまに見える赤い舌が、上下だけではなく淫核に絡み付いているのがわかる。
「んふっ、気に、いった、かえ? じゅるっ」
「あっあっ……ふぁっ」
自分では経験できないだろう快感に蕩ける観緒はまともに答えることはできず、弱々しい手が月見の頭を押し付けるようにそえられた。
「……初(うい)娘じゃ」
月見はそう言うと動きを早める。
秘裂は開き切り、中から中から止め処なく愛液を滴らせ。
「ひっ! ひっ! あひっ! あ、あ、ぁ、あっ」
くぷくぷくぷ、と唇が締められ、さらに中では舌が淫核を擦り。
「うっぁ、ひぃっ! あぁぁあっ」
徐々に観緒の体が震え、それを見た月見は。
「ほれ、逝ってしまえ」
「――っ!!」
口をすぼめ、思いっきり淫核を吸った。
ぢゅぅぅうう!! と音がするほどの吸引。
「ひぃぁぁあああああっっ!?!?」
観緒はガクガクと体を痙攣させ、力いっぱい月見を押し付ける。
それに合わせて秘裂から潮が噴き、月見の顔を汚していく。
「……ぁふ……ぁ、ぁあ…」
そして波を超えたのか、観緒の手が緩んだ。
「ぷぁ……どうだったかえ?」
月見が顔を上げ、観緒へと向かうと。
「きゅ〜〜……」
「おろろ…気を失っておる。
ちとやりすぎたか」
目を回した観緒を見て、月見は頭をかいた。


「な、なんだ……あれは……」
目の前で起きていたことに思わず呟いた。
まさか月見と観緒ちゃんが……その、激しく……。
全身が熱くなってるのがわかる。
「いや、こんなもの見たら寝るどころじゃ」
「それならば沈静効果のあるお茶を入れましょうか?」
背後からかかった声に肝が冷えた。
聞き覚えのある鉄の芯が入ったような声に、振り返ることはできず、全身の熱が一気に冷めるのがわかった。
「膜に手がかかったら叩き切るつもりでしたが、これならまあ許しましょう」
背中に冷や汗が流れる。
「くれぐれも、このことはご内密に」
その声はそれだけを言うと、そっと遠のき……消えた。
陽司がゆっくりと後ろを向いても誰もいない。
もう襖の間を覗く気もおこらず当初の目的、トイレに行ってさっさと寝ることにする。
はたして、今日はもう寝られるのか不安であるが……。


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