「絡み蛇」   作:匿名希望




『主人急病のため、本日はお休みさせて頂きます。ゴメンね! 月見』

「ぶえっくしゅんっ!!」
全身からくる悪寒に我慢できず俺は大きなクシャミをした。
「のわ! 陽司! こっちを向いてするでない!」
それに氷嚢を用意していた着物のウサ耳少女――月見は避けるように身を屈める。
「ず、ずま゙な゙い゙」
覚束ない手でティッシュを掴んで鼻をかむと、電子音が咥えた体温計から鳴り響いた。
「どれ」
月見が体温計を抜き取り、それを見て溜息を吐く。
「40.8度。ものの見事に風邪じゃの」
そして呆れたような顔をする。
「寝る時に腹でも出していたのかえ? まったく、店まで休んでしもうて……体調管理も仕事のうちじゃぞ!」
熱でふやけた耳に流れ込んでくる説教。
さすがに勘弁して欲しい。
「そもそもじゃがっ」
「ぞれ゙よ゙り゙も゙……」
俺は説教を遮り月見に顔を向けた。
「……行がな゙ぐでい゙い゙の゙が?」
月見の手には巾着袋が吊り下げられ、唇にも薄く紅が差してある。
なんでも遠方からわざわざ、妖怪や神のお偉様がこの近辺で集会(実質宴会)をするらしく。
それに月見も参加するはずなのだが。
「じゃがの……やはり今日は止めて――」
「行ってきなさいよ月見」
行き渋る月見へ声をかけたのは白髪の女。
「じゃが雪紐殿」
女――雪紐はあっさりと言った。
「大丈夫。陽司は私が看病しておくから」
その言葉に俺と月見は目を丸くする。
「な、なぬ? 雪紐殿が参加せぬとは……雪紐殿も熱が」
「……随分失礼な兎 だ ね っ!」
「いひゃいいひゃいっ!」
月見の頬が餅のように伸びる。
俺も同じことを思ったのだが、黙っておこう。
存分に月見の頬を引っ張った後、雪紐は腰に手をやり溜息を吐いた。
「遠方から爺婆たちが来るんでしょ? 私は遠慮しとく……説教されながら呑む酒なんか楽しくもない」
するのはいいのに、されるのは嫌なのか。
無論思うだけで口には出さない。
「いや、じゃが……」
雪紐はこちらを窺う月見の肩を掴むとクルリと反転させ、その背中をパアンと張った。
「いひゅうっ!?」
「ええい! ぐだぐだ言ってないで行った行った!」
月見は痛そうに背中を擦りながら、雪紐へ顔を向け。
「雪紐殿、陽司を頼みますぞ」
「任せなさい」
胸を張る雪紐。
見事なバストが突き出される。
「粥やご飯はすでに作ってあるので、レンジでチンして食べてだされ」
「はい」
「もし業者などが来たら折り返し連絡するので名前だけ聞いて」
「はいはい」
「汗を拭くタオルなどは居間に用意してあります」
「はいはいはい」
「もし陽司になにかあればケイタイに」
「はいはいはいはい」
月見……お前は俺の母親か? いや似たような立ち位置っちゃ、立ち位置なんだが。
雪紐にぐいぐい押されながら部屋を出て行く月見。
「それから……」
「はいはいはいはいはい!」
どたどたがらららぴしゃん!
家から追い出すような音を聞きながら、俺は枕元に用意された薬を飲んでさっさと寝ることにした。


空になったお粥の鍋を眺め、雪紐は一息つく。
目の前の布団で陽司が寝息を立ている。
結局、あれから月見の心配していたようなことは起こらず、比較的平穏に時は過ぎていた。
薬のおかげか、陽司はお粥を食べた後すぐに寝てしまい。
結果することがなくなり、雪紐は暇を持て余していたのだ。
「あー……退屈……」
さすがに早々酔わないとはいえ病人の横で酒を呑むわけにもいかず、まさか同じように寝るわけにもいかない。
さて、どうしようかと雪紐が悩んでいると。
「ん〜〜っ」
陽司が寝苦しそうに布団を跳ね除けた。
「陽司?」
雪紐が話しかけるが返事はない。
覗き込むと陽司の額には汗が伝い、寝巻きはぐしょぐしょで肌に張り付いている。
「ふむ」
雪紐はそれを見て考え込むように腕を組むと。
「これはいけないね」
にやりと楽しそうな笑みを浮かべた。
そして一旦居間へ引っ込み、戻ってきた時にはタオルと水の入った桶を持ってくる。
「さぁて、風邪をこじらせてはいけない。拭いてあげないと」
退屈を紛らわせれば何でもよかったのだろう。嬉々として雪紐は陽司へと手を伸ばした。
帯を解くと、ぱらりと寝巻きが肌蹴る。
「む……意外と引き締まってる」
想像していたのとは違ったのか、そこそこ筋肉質な身体つきを見て雪紐は唸った。
ただ、見ていてもしかたないと思ったのだろう。
タオルを絞り体を拭き始める。
「あーあーあー。
こんなに汗まみれになって」
手馴れた手付きでさっさと上半身を拭き終える雪紐。
「さて、次は……」
そのまま雪紐は下へ取り掛かろうとして。
「あ……えっ!?」
トランクスを押し上げるものに気がついた。
「ちょ、ちょっと待て! なんで……風邪引いているんだよね? しかも寝てるし……」
それは見間違いようも無く、窮屈そうにゴムに逆らい立ち上がろうとしている。
どうやっても視線が外れない。
「いや……その、苦しそう……だし……ね」
どこか言い訳がましいことを言いながら、雪紐は恐る恐る手を伸ばす。
端を掴みほんの少し引っ張ると、トランクスはずり落ち。
解放されたものが勢いよく起立する。
「う、わ……」
雪紐がごくりと唾を飲んだ。
蒸れた汗のにおいを無意識に雪紐は嗅ぎ取り、興奮するかのように大きく息を吸う。
「すー……はぁ……」
その頬は軽く上気している。
そして雪紐は思い出しかのように手のタオルを握りなおした。
「そう……体を、拭く……」
免罪符にもならないような呟きは掠れて消える。
そっと腹へタオルが触れ滑り、硬いものへとたどり着いた。
雪紐は布越しの弾力を確かめるように握り込む。
「はぁ……あ…」
タオルの荒い生地が血管の浮かんだ表面を擦り動く。
その度、徐々に硬さが増しタオルを持つ手を押し返す。
そして力加減を間違えたのか、雪紐の手からタオルが跳ね除けられた。
だが、すでにそれを再び拾うことはしない。
「――っ」
雪紐はまた一つ唾を呑むと、自らの指を直接絡めた。
「あ、つい……」
ゴムに似た弾力と思いのほか高い熱を感じ、その言葉は無意識に呟かれる。
どくどくと血の流れが手の平から伝わり、その刺激に陽司の口から呻きが上がる。
それを聞いた雪紐は緊張に背を震わせるが、それ以上のことが無いとわかり安堵の息を吐く。
「うわぁ……」
そして改めて握りなおすと、その手はゆっくりと感触を確かめるように動き、刺激与え始めた。
雪紐の息が荒くなる。
初めは恐る恐るだった動きが、徐々に激しくなっていく。
更に余った手は自然と足の付け根へと下りていき。
「…んっ……あぅ……」
熱い吐息と、ぐちゅりという水音がスカート越しに響く。
「ん、んん……は、ぁ…ぃい……」
己が濡れていることへの驚きと羞恥が湧くが、それより快楽が勝った。
肉壷をかき回し、肉壁を抉り、滴る雫を受け刷り込むように擦る。
初めは拙かった手は慣れと共に乱暴になり、息は早く高くなっていく。
「うぁっ……いっ…あっあっ……んくっ」
陽司のものを無意識に扱く手は溢れるカウパー液で湿った音を立てて滑りる。
息は詰まるように早くなり、空気を求めあえいだ。
「っはっはっは……あっ……」
そして際限なく高まる中、雪紐は今まで触れなかった場所。
皮の上から判るほど充血したものへ指をかける。
震える指でその皮を優しく剥き、硬く充血した淫核を取り出すと。
きゅっと摘んだ。
「〜〜〜〜〜〜っっ!!」
全身が強張り、扱いていたものを思いっきり握り締める。
「っあぁ〜〜……ぁあぁぁ……」
緊張した体がほぐれ荒い息を吐く。
ふと手の中のものが根元を強く握り締め過ぎたのか、射精できず苦しそうに痙攣していた。
雪紐は熱に浮かされた目でそれを見ると、顔を近づけ舐める。
「じゅる……ちゅっ……ん、苦しそう……」
さらに苦しそうに震えるそれを押さえつけながら、雪紐は腰を浮かせた。
雪紐は自らのスカートの端を口に咥えると、用をなさない下着に手をかける。
濡れて張り付く布地に苦戦しながら足から抜き取ると、それは軽く糸を引いた。
「んふ……ん……」
スカートを咥えたまま雪紐は陽司を跨ぐと、握ったまま誘導する。
くちゅりと肉が触れ、ねば着いた音を立てた。
「ふぅー……ふぅー……」
雪紐は二、三度深く息を吸うと、腰を落とし始める。
「う……ふ、ふ、ふ……ん…ぃ……っ」
少しずつ腰が下り、ずずっと膣へと飲み込んでいく。
そして、こつりと行き止まりを軽く押し上げ、腰と腰が密着した。
ぶるりと体が震えた瞬間、体の奥で熱いものが溢れかえる。
「ふ、んぅぅ……っ!!」
体がガクガクと痙攣し、子宮を直接叩く熱さに雪紐は呻き、耐えた。
萎えることなく硬いまま、さらに子宮を押し上げる感覚に背筋からくる怖気を雪紐は受け止める。
膣内に注がれる熱を感じながら、雪紐は腰を動かし始めた。
「あぁ…うぅん…ふぅっ……んぃっ!」
ぐちょぐちょと溢れる精液と愛液が混ざる音。
咥えていたスカートが口から落ちた。
浮いては落ち、浮いては落ちての小刻みな動き。
スカートに隠れた結合部は泡立ち、すでに注がれた分は掻き出され、新たな愛液が滴っている。
「あっあっあっあっ……」
一突き毎に声が高くなり、切羽詰っていく。
眼下の陽司は一向に目覚める気配を見せない。
ふと雪紐は彼を道具のように扱っていることに気がつき、暗い愉悦に心を震わせた。
それに合わせて膣が締まり、狭くなった中を強引に掘り進まれる。
「ひぅっ!! ひぃあっ! うあっあっあっ!!」
予想外の高まりに腰を止めることさえできず、それどころかさらに動きが小刻みにそして早くなり。
「〜〜〜んぃぃいいいいっ!!」
下の胸板に突っ伏すようにして体を丸め、全身を震わせる。
更にきつく締め上げる膣内で、ごぽりと再び射精する感覚に口端から垂れる涎を気にすることも無く、雪紐は連続で気をやった。
「……あっ…あっ……あぁっ……まだ、いっぱい…」
断続的に射精されるたびに、びくりと体が跳ねる。
射精が落ち着いてくる頃には、雪紐はぐったりとしていた。
「はぁ…はぁ…はぁ……ふぁ…」
ようやく膣内に収まっているものが衰えてきたのを雪紐は感じ。
「んぁあっ! あぁ……」
ゆるりと腰を回し始める。
胸板にしがみ付き、足を絡め、大きくだが柔らかく腰を回す。
ぐじゅりと結合部が湿った音を立てる。
「……あ、また……硬く…」
どこか嬉しそうな雪紐の声。
再び硬度を取り戻してきたものを確かめるように、よりゆっくりと腰が動く。
今までと違った場所を擦るのだろう。雪紐の声は衰えることなく、静かに高まる。
「ぃひゅっ……あぅ…んぁ……ぃっいっ! ……あっあぁっあっ!!」
擦り付け、かき回し、くわえ込む。
円を描くように揺れ動く臀部の間から時折潮が噴出し、悲鳴が上がる。
そして気持ちの良い場所を見つけたのだろう。
「……ぅあぅううっ」
そこを重点的にゴリゴリと擦りつけ始めた。
「ぅぁっ、ぅぁっ、ぅぁっ! ぅぁっ!!」
突如、ガクガクと体が跳ね膣が締まる。
だが動くことを止めない。
「ぃいっ! ひぃぃ! あひっ! ぅゔゔゔゔ……っ!!」
貪欲に、ひたすら貪欲に快楽を飲み干そうと雪紐は動き続けた。
痙攣する膣内を無理やり抉じ開け、膣内にある反り返ったもので裏側を抉らせる。
くいくいと勝手に腰が浮き、予想外の部分が擦れまた腰をすり寄せた。
絡み合い、溶け合おうとするような、体を巻きつける蛇のような性交。
「……ぉあぅ…はぁ…んんっ……ふぅん……」
いつの間にか射精されていたとしても、一滴でも多く飲み込もうと扱くように腰が動く。
こぷこぷと中に子種が溜まっていくのを感じ、その熱さにまた果てる。
「ぃひ……っ! …あぅ……はっはっはっ…!」
雪紐はもはや、いつどちらが果て気をやったかわからなくなっていく。
掠れている意識の中、いつの間にか日が暮れ星が瞬くことに気がつき。
「ぁ……ふひゅっ……ぉお…んっ!!」

また子宮へと注がれ、体を震わせ長い呻きをもらす。
蕩けた笑みで冷たい胸板へ頬をすり寄せ、腰をゆるゆると動かし始める。
その耳に、ドタドタと足音が聞こえたが、雪紐は理解すらしなかった。


『主人重症のため、暫くお休みさせていただきます。本当にゴメンね!! 月見』

生まれてこれまで様々なことを体験し、多少のことでは驚かないという自負はあったが。
「…………(ゴゴゴゴゴゴゴゴっ!)」
「…………(しゅーん)」
雪紐が正座して俯き、それを月見が腕を腕を組んで見下ろしているという図は、十分驚いて良いと思う。
布団の中、一歩も動けぬほど衰弱しながら俺はただ呆然とそれを見守っていた。
「いつもいつも雪紐殿は後先を考えなさすぎるのじゃ!」
クワッ! と背後に鋭い歯をむき出しにした兎を幻視しするほどの剣幕で月見が口火を開く。
「……はい」
尻尾をまるで犬のようにくるくると巻いて雪紐は返事をする。
「わしが心配になって帰ってくるのがもう少し遅かったら陽司がどうなっていたことか!!」
「……はい」
「あの陽司の真っ白な顔を見た時は、こっちの心の臓が止まるかと思ったのじゃ!!」
「……はい」
「もし行き付けの先生が真夜中に関わらず来てくれなければどうなっておったか!!」
「……深く反省しております」
……ちょっと待て。なんだそこまで重体だったのか。
昼に寝てそれから気がつけば夜中で、月見が慌てていて、子供の時からお世話になってる先生がいたが。
命にかかわるとは聞いてなかったぞ。
しかもなんか、先生は去り際に「若いとはいえ、程々に」
とかニヤつきながら俺に呟いたけど。
「するなとは言いませんが、今後時と場合とわしの許可と参加を求めるようにお願いします!!」
「……肝に命じます」
がみがみぺこぺこと説教をしている月見たちへ、なんとか顔を向けてる。
そして搾り出すようにして聞いた。
「な……にが…あったんだ?」
それに雪紐はあははと笑い。
月見は少し眉を潜め。
「「陽司は知らなくてもいい(のじゃ)」」
と言った。
なんなんだよ一体。
それ以上聞いても無駄だと判断し俺はふて寝することにした。
どうせ三、四日は安静にしないといけないのだから。
「罰として、これからしばらくお酒は控えてくだされ!」
「そ、そんなっ!?」
いや、よそでやれよ二人とも。


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