「乱れ月外伝 〜 なき蛇」   作:匿名希望




「ひぃ! な、なにをっ! は、離せっ!」

掴んできた手は熱く、そして力強い。
所詮は人の力、衰えたとはいえ神の自分にとって簡単に振りほどけるはずだった。
それなのに、振りほどけない。
腰が抜けているのもある、熱に当てられたのもある。
だが一番は。
「――――」
その目に射抜かれたことであった。
蛇に睨まれた蛙という言葉があるが、蛇が睨まれて固まるとは笑い話にもならない。
私は引っ張られるままに部屋へ連れ込まれる。
視界の端にぐったりと倒れている月見が見えた。
だがそれどころではなく、もしかしたら己がそうなるかもしれないのである。
そこは熱気に包まれていた。
汗と精液と愛液と腸液の混じったすえた臭い。
胸いっぱいに吸うと頭がクラクラし、意識が逸れた瞬間に、その顔は眼前にあった。
「っんむ!?」
唇を『食べられる』。
「んちゅっ……ぷぁ…やめ……噛むなぁ…」
唇が唇を挟み、舌が舐め、口へと吸われた。
フレンチよりも深く、ディープよりも浅い。
「…あ……ふぁ……んん……」
ネトネトと絡むような口付け。
どうしても息を止めがちになり、それだけで頭に霧がかかっていく。
「あむ……ん、んぅ……ちゅぷ…」
気がつけば自分から求めていた。
絡み、離れ、そしてまた触れ合う唇と舌。
目が合った。
ぼんやりと眺める視界で、その目は意識にヌルリと入る。
ああ今、自分は『ものにされているんだ』と。
服の上から胸を揉みしだかれた。
「……ふひゅっ」
ぐにぐにと形を確かめるように手が動き、乳房が形を変える。
マッサージをされるように優しく、だが力強くもまれ胸全体に少しずつ熱が広がっていく。
「……ふぅ…ん……ぷぁ…あふ…」
胸の熱が上がり、息が早くなる。
口付けが続き、息ができなくなる。
息が止まり、頭に酸素がこない。
朦朧とする中、必死に唇を求め出した舌が吸い込まれ。
もみしだく手がいつしか服の下へと潜り込み、乳頭ごと摘み引っ張られた。
「――んぶっ!? んん〜〜〜っ!!」
口が密着し、思いっきり吸われる。
まったく予想外の刺激に対応し切れない。
背筋が震え、まったく触れていない腰がビクビクと浮いた。
「……ぷあ……」
離された唇と唇が銀糸で繋がり、切れる。
腑抜けた意識は戻ってこず、ただただ目の前のものを眺めるだけ。
だから布団へと押し倒され、服をたくし上げられても抵抗はしなかった。
「…あ…あぁ……」
体を弄られる度にそこが熱くなり、ぼんやりとした頭で鈍い理解を示すだけ。
そして手が足の付け根へと行き、ぬかるんだ秘裂を擦った。
ぐじゅっと水っぽい音がして、割れ目を伝う愛液に身震いする。
「ん……」
今更部屋の大きさに圧迫感を感じた。
窓を締め切った部屋は酷く蒸し、三人もの体温が篭り、火照った体も相成り汗が浮かび流れた。
そして先ほどから見えていた、猛りに猛ったものが触れる。
濡れた下着がずらされ、予想より『下に』圧力がかかっていった。
「――っ!?」
一気に覚醒する。
体の異物への反応と、脳内の警告に声を出し。
「そ、そこは入れる場所じゃな――っ!!」
ずぐりと熱いものが割り開いた。
「っぁ――かっ!!」
声が出ない。
無音で開閉する口から空気が漏れ。
それは容赦なく、ずるずると腸壁を擦り潜り込んでいく。
「あ゙ぁあ゙あ゙あ゙っ!? 痛い痛い痛いぃい!!」
目からボロボロ涙が零れた。
切られる、殴られる、叩かれる、破瓜(やぶ)られるでもない痛み。
引き裂かれる。
本来出すはずの場所へと強引に割り込む硬い異物。
「あ゙あ゙ぅっ!! ひい゙い゙ぃ!!」
周囲の肉を巻き込み進むそれは、もはや拷問だった。
そして地獄のような時間がようやく終わる。
「ひぃっ…ひぃっ……」
口から喘鳴のような息が漏れ、涙が止まらない。
お尻から感じる異物はひたすらに熱く、硬い。
「ぃぃいいいっ!!」
少しの振動でも鋭い痛みが奔り、私は動かないように体を強張らせるが。
「――」
目の前の男には関係ないのだろう。
力任せに引き抜かれた。
「や゙ぁぁあ゙あ゙あ゙――っ!!」
悲鳴。
引き抜かれたものは当然、また強引に押し込まれる。
「や゙あ゙!! や゙あ゙ぁぁあ゙!!」
もうこれ以上の上限がないと思っていた痛みを超える痛み。
喉が裂けるかと思うほど叫ぶがまだ声は出る。
「い゙い゙ぃっ!!」
がりがりと畳を引っ掻き逃げようとするが、がっしりと腰を掴まれ引き戻され。
ずるるる……。
再び抉る塊に中の壁を擦られる。
「い゙だい゙っ! い゙だいぃ…い゙ぃ!!」
もう威厳も何も無い。
痛い痛い熱い痛い熱い痛い熱い熱い熱い―― 痛みが麻痺するとよく雑誌にあったが、そんなことはない。
痛い、だがそれと同じぐらい熱い。
「あ゙っあ゙っあ゙っあ゙あ゙ぁっ!」
喉は枯れよばかりに張り上げられ、瞳から流れる雫は止まらず、無慈悲に擦られ抉られ巻き込み引き抜かれまた突き込まれる。
空いた手で乳房を握られ、その痛みに悶えるていると、乳首を思いっきり引っ張られた。
「ぎぃぁあ゙ぁ!!」
千切れるかと思うほどの痛み。
釣鐘のように力任せに形を変えられる乳房。
「い゙や゙ぁ! わ、わらしの胸ぇ!!」
神から人へ、人からものへと堕とされる。
頭を掠めた言葉はそのまま消え。
ぎちぎちと穴を押し上げる感覚に突き入れるものが大きくなったのがわかった。
「い゙あ゙あ゙ぁ!! ひぃい゙い゙…っ!」
グミを潰すようにこね回される乳首。ぶぢゅぶぢゅと無理やり抜き差しされる中、その速度が上がる。
熱くて痛くてどっちを感じればいいのかわからなかった。
脳に直接熱さと痛みと衝撃を叩き込まれる空想。パチパチと爆ぜるような音を幻聴を聴いた瞬間。
ぞりっと音がしそうほど強く、そして奥へ腸壁が擦られ。
「がひゅっ…あ゙あ゙……あ゙…あ゙――」
奥の奥。
ぶわりと傘が広がったのを感じ、背中が勝手に反り返る。
全身の筋肉が硬直し、きゅうぅっと穴がすぼまる中、熱いものが注ぎこまれた。
「あ゙ゔぅぅゔゔゔ……っ」
熱さに悶える。
吐き出す動きに連動して腰が勝手に動き、締め付け絞っていく。
片方の胸を引っ張られている中、もう片方の乳首を噛まれた。
「ぎぃっ! ちくびとれぅ……とれひゃぅ…」
そのまま引っ張られ乳首から乳房に痛みが走る。
その刺激がさらに締め付けをきつくし、絶えず絞ろうと腸壁が蠢く。
とっぷりとお腹の奥へと溜まっていくのを実感し、背筋を快楽にも似た震えが奔る。
「あ゙ぅ……ぅゔ……」
弱々しい声しか出ない。
衰えていく射精に、ようやく終わると頭のどこかで安堵した。
もう痛みと痺れしか感じない穴をどうしようかという考えは。
ずりゅ、と音を立て動かされたことで儚く砕かれた。
「あ゙あ゙っ!」
再び腰を掴まれ、赤く捲れた穴を擦られ、胸への刺激が再開される。
「……やぁ……もう…やぁ…っ」
子供の駄々のような言葉に、彼は止まるなどありえず。
「や゙ぁぁ……」
再び動き出す熱に翻弄され――

「ちえい!」

すぱこーん! とその顔が横へ傾いた。
「やりすぎじゃ!」
彼の後ろにはいつの間に起きたのか、手にフライパンを持った月見。
そのフライパンは振り抜かれており。
ふらふらと彼はゆれた後……ぱたりと横になった。
「あは……あはは……」
あまりといえばあまりな結末に私は笑うしかなく。
「ひぃいん……」
「おわ! 雪紐殿! そんな抱きつかないでくだされ! あ、ほらほら…泣かない泣かない」
後で後悔するであろう、一生分の恥をかくことにした。


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