「乱れ月」   作:匿名希望




開店からお昼過ぎまでのピークを過ぎ、平日のこの時間は客足が途絶えてしまう。
先ほど勘定したお客が、昼の部の最後の客になるだろうとぼんやりと思う。
夜の仕込み、調理場の掃除、昼の会計計算も済ませてしまい正直手持ち無沙汰であった。

暇を持て余していると。
「おーい、酒のお代わりとなにかツマミをくれないか?」
そんな声がかかる。
一つ溜息。
冷蔵庫から「神便鬼毒酒」とラベルの貼られた一升瓶、余った豆腐を取り出す。
もちろんそれは『お客に』出すのではない。
その二つを手に持っていく先には。
「おお、すまんな陽司」
銀と言うよりは陶磁器ようなの滑らかな白髪、そこから一対の角が覗き、怖いほど整った顔立ちには気品が漂う。体は起伏が激しく、形のいい臀部からは蛇のような尻尾が伸びている。
雪紐という『居候』は嬉しそうに自分専用のぐい飲みに酒を注ぎ、そのまま一気に空けた。
「――っは〜〜! やっぱこれだねぇ」
実に親父臭い声をあげた後、雪紐は用意した豆腐を肴に本格的に呑み始める。
いやまあいいんだけどな。
「精々呑み潰れないようにな」
そのまま調理場へ戻ろうとしたが。
「陽司。一献どうだい?」
目の前にぐい飲みを置かれる。
「いえ、営業時間なんで」
断ろうにも。
「もう昼の部が終わるまで20分もないし、どうせこの時間に客なんて来やしないよ」
内情を詳しく知っている相手は非常にやっかいだ。
「月見は」
「用があって出てるよ。それに今日満月では酒には付き合えないって、寂しいもんさ。代わりに一杯ぐらい付き合ってくれてもいいだろう?」
この酒好き妖怪は。
「一杯だけですよ」
そう言って俺は並々と注がれたぐい飲みを掴み、一気に傾けた。
「おお、良い呑みっぷりだ」
呑み切ると、空になったぐい飲みを雪紐の前に置き。
「これで一杯付きあ」
胃の底から火が点いたような灼熱感が駆け上がる。
「き……っつぅ!?」
予想外のことに悶える俺を見て雪紐は笑う。
「鬼も夢中になった酒だ。ちょっと度数が高いけどね」
いやちょっとどころじゃない! 声に出そうにも頭に物凄い勢いで熱が回り付いていけない。
それを気にせず、雪紐は一升瓶を掴む。
「さて、そんなに良い呑みっぷりをするなら、もう一杯いこうか」
雪紐はそう言ってぐい飲みに再び並々と酒を注ぎ始め。
「帰ったのじゃ」
ガラリと戸が開いた。
そこにいたのは腰まで届く黒髪に同じ色のウサ耳を伸ばし、白い肌に黒い着物を着こなした小柄な少女である。
「ああ、お帰り月見」
出迎える雪紐に月見は顔を向け。
「って、なにをしておるのじゃ陽司」
ぐったりとした俺に見て状況を理解したのか溜息を吐く。
「また雪紐殿……。陽司! もう店を一旦閉める時間じゃぞ。暖簾は下ろしたので水でも飲んで夜の準備をするのじゃ」
「うおぉ〜〜い……」
月見の声に内心感謝しつつ、調理場へと戻る。
背後から話し声が聞こえるが。
「それで雪紐殿。話とは?」
「ふふん。知っているかい? 男には秘密のツボが――」
その内容を気にする余裕が俺にはなかった。


窓から丸く『いつかの月』が覗き、部屋をぼんやりと照らす。
体は火照り、意識が混濁し、最高に寝苦しい夜。
寝ぼけている。
ぼんやりと思考のしの字もない頭でそう判断した。
指一本動かすのすら億劫なのに、体の奥から燃えるような熱を感じる。
なぜか今日は月見が張り切ってそこそこ豪勢な夕飯だったが、それがいけなかったのか。
レバニラ炒め、鰻重、長芋入り卵焼き、馬肉のニンニク焼き、そしておまけがハブ酒。
ここ最近忙しいから精をつけるためと言っていたが……ものの見事に別の方向に精がついている感がする。
かといって隣の部屋で月見と雪紐が寝ている状況で処理をするわけにもいかず、悶々と耐えていたのだが。
眠気と興奮とで段々自分が起きているのか、起きている夢を見ているのかわからなくなった頃。
「ぴちゃ……ちゅう…ちゃく、もぐ……」
どこからか水音が聞こえた。
「ぐちゅ…ちゅぢゅっ……」
そしてその音と共に下半身から広がる甘い感覚。
なんだろうとぼんやりと下を見ると、掛け布団がいつの間にか捲られ、そこに動く影がいる。
「んん…んむ…ちゅぷ……ふふ、起きたかえ?」
影は咥えていたものから口を離すと、その幼い顔立ちに似合わぬ笑みを浮かべた。
「つき……み?」
赤い瞳の前に、頭の芯がジン…と痺れる。
「陽司、これは夢じゃ。
一時の…な」
ああ、俺はいつの間にか寝てしまったらしい。
月見がこんなことをするはずもなく、これは夢なのだろうと納得する。
「雪紐殿に聞いてな……んちゅ」
片手で硬くなったものをいじりながら舐め上げられ。
「試したくなったのじゃ……」
その指が降り。
「……男のツボ、とやらをの」
俺の尻へ至った。
ぞわりと背筋を這う悪寒。
「なんでも男は嫌がると聞いてな、すまんが少し自由を奪わせてもらったよ」
確かに手を動かそうとすると異様に重い。
そんな様子を見て、指で周囲をなぞりながら月見は楽しそうに言う。
「無駄じゃよ。霊力を持たぬ者がいくら足掻いても解けはせぬ」
ああ、確かに重い。動かすのは非常に辛い。
10キロの重りを腕に括りつけているイメージ。
だが、 「さあ暴れんでくれ。
下手に動くと傷つける恐れが」
動かないわけでない。
俺はあえて重さを無視し、目の前にある細い肩を掴んだ。
「へ?」
呆然とした顔。
「な、なぜ動けるんじゃ!?」
ああ、兎が驚き騒いでいる。
夢なのに随分と騒がしい。
「……っまさか! 昼に雪紐殿が呑ませた霊酒っ!」
五月蝿いのでそのまま引き寄せて口を封じる。
「んむっ!? んんっ! ん、んちゅ……ちゅぷ」
舌を突き込み、口内をかき回し、舌を絡ませ吸い、唾液を啜り逆に流し込む。
始めあった抵抗も時間が経つごとに減っていき、5分もしない内に無くなった。
「あん…じゅるるっ……ぴちゃ…」
それだけで俺が満足するわけも無く、そっと手をその薄い尻へと持っていき。
「んぐっ…ん……ひゃうっ!?」
びくりと腕の中で月見が跳ねた。
すでにそこは濡れそぼり、少女の形そのままの場所から滴り布団へと染みてゆく。
だが俺の目的はそこではなく、その後ろ。
「そこは違っ!? むぅっ!」
講義しようとした口を再び塞ぎながら、指でその硬い穴をいじる。
「ぐむぅ! むぐぐ……んん〜っ!」
十分すぎるほどある蜜を指に絡ませ、穿るように動かしていく。
上も下もぐちゅぐちゅと音を立て、ひたすらに貪る。
そして徐々に柔らかくなってくると、つぷりと指を1本増やした。
「むむ〜〜〜っ!!」
一層激しくなる抵抗を抑え込み、ひたすらにかき混ぜ、更に3本目を突き入れる。
「んむぅうう!? ん〜〜! んんん〜っ!!」
嫌がるような素振を見せるが、密着した体の熱は心なしか上がり、その体もほんのりと赤くなっている気がした。
暴れる月見をよそに、ふと視界に隅にあるものが映る。
荒縄と玉が連なった形をしたバイブ。
それをどうするつもりだったかはわからないが、ちょうどいい。
使わせてもらうことにした。
舌と指を引き抜くと、月見は息を荒げながら口を開く。
「っはぁ! あ、あんな場所を弄るでない! 汚いであろ――っ!?!?」
その言葉は続かない。
「あ゙…あ゙ぁぁ……」
ちょろろろ…と音を立て湯気を出しながら、月見の股間が今までとは違う水気で濡れ。
開いた口端から雫を垂らし、呆けたまま全身を震えさせる。
それを見ながら、俺は根元まで突き入れたバイブをグリッと回した。
「ひぃぃい゙い゙い゙っ!!」
痙攣するかのように月見が跳ね、ぷしゃっと股間から飛沫が舞う。
まるでリモコンで動く機械のようで少し面白いが、やはり足掻くような動きが邪魔だ。
荒縄を手に取ると、力の抜けたその体に手早く縄を通す。
「……あ」
血管などを絞めない様に気をつけながら縛り、終わる頃に月見が気がつくが、もう遅い。
月見は動こうとするが、体の各所を縛る縄で動けない。
それを確認すると、俺はバイブをゆっくりと抜き差しを始める。
抜く。
「ぅあぁ……」
差す。
「ひぅぅっ」
俺の腕に合わせて動く裸体を見ながら、更にバイブのスイッチを入れた。
「ゔあ゙ぁぁあ゙あ゙あ゙――っ!!」
ぐねぐねと蠢くバイブは動かし辛いが、それを強引に動かしていく。
「ひっ! い゙っ! お゙っ! ……あ゙っあ゙っあ゙っあ゙ひ!?」
逃げようとしているのか、それともより快楽を貪りたいのか。
縄で締め上げられ腰を突き上げ揺れる月見の姿は煽惑的で、俺のものがより硬くなるのがわかる。
そして我慢し切れなくなり嬌声を漏らし続ける月見の顔を掴むと、その口に無理やりものを突き込んだ。
「おぶっ!?」
遠慮も何も無く碌な抵抗すら出来ぬ少女の口内を喉まで犯しつくす。
「ごぶぶっ! ごっぽごっぽごっぽ…っ」
もちろんバイブを動かす手も止めない。
上と下を同時に貫かれ月見が面白いぐらいに跳ねる。
突き込まれたものを拒もうと細動する喉はひどく締め付け心地よい。
「おぼっおぼっ…ぼぼぶっ!」
そしてさしたる時間もかからず高まり、俺は我慢せずに解き放った。
「ごっぷ……んぐっ…げぽ……」
なぜか萎えることの無いそれを吐き出さないように奥に更に突き込み、二度三度と連続して放ち突き込む。
そして馴染ませるように揺すった後、ずるりと引き抜いた。
「が…ぽ……こぷ……」
突っ伏した月見は口から飲みきれなかった分を力なく吐き出す。
改めて俺は目の前の少女を見た。
細く柔らかな四肢は拘束され、飛びぬけるほど白い肌は火照り薄紅色に染まり、濡れ羽色の髪は乱れ広がり、笑みを絶やさぬ顔はひたすらに虚ろ。
この状況を作ったのが自分だと思い湧き上がるは、罪悪感、背徳感、そしてなにより多大な興奮。
未だ動き続けるバイブを抜き取る。
「…ふ、ぁ……」
潤うが閉じた秘裂と、トロトロの穴が対称的だった。
すっかり弛緩した穴は、奥の壁までそれ自体が別の生物の様に蠢く。
弱々しい体を抱き上げると、鈍痛を感じるほど反り返るものを定め。
「ひぃぁ……あっ…あぁぁ……ぅぁぁあ…っ」
ぬぐぐ…と小さな体に収めていく。
腰と腰が接地する。
「ぁ……はぁ……はぁ……」
内部はつるりとして柔らかく締め付け、呼吸とともに蠢き絞る。
俺へぐったりと体を預ける月見の腰を掴むと、ぬるぬると動き出した。
「ぁ…ぁぁ……ぁ…」
体が上下するたびに緩やかな快感が広がるが、それに力はなく。
朦朧とした嬌声が上がるが、それに艶は一切無い。
物足らなかった。
月見の体を撫で弄るが反応すら今一つない。
だが。
「……ぁっ」
ピクリと月見が震えた。
むずがるように体を捻り、俺の手から『そこ』を守ろうとする。
「あ……や、…やめ……」
儚い抵抗。
俺はそれを無視し秘裂の上――突起した豆を摘み上げた。
「ぴぎぃっ!?」
壊れんばかりに月見が反り返り、ぎゅうっと痛いほどに締め付けられる。
カチカチになった豆を摘み、粘土をこねほぐすように摘み潰す。
「がっ!? ぎぃぁっ! あぎぃぃ!!」
敏感な部分を容赦なく弄られ、ガクンガクンと壊れた人形のように痙攣する月見を見ながら、俺は更に腰を突き上げた。
「ぐっぁあっ! ひぃい゙! ぎっぎっ!?」
柔肉を強引に貫き、引きずり出し、また貫き、それを繰り返しひたすらに腕の中の少女を犯す。
豆をこねるほどに穴は締め付け、それを抉じ開けてゆく。
「ふぃいっ!! ぴっ! ぐぎぃ!! い゙い゙ぃぃっ!?!?」
強烈な快楽。
湧き上がるものを我慢せずに放った。
「あ゙ぅゔっ!!」
放たれる熱さから逃げようとくねらせる動きすら快楽へと繋がり。
俺は止まることなく動き続ける。
「ゔぁ! あ゙あ゙あ゙っ! お゙っお゙っお゙っ!?」
射精は止まらず、途切れることなく月見の中へと垂れ流し続け。
高まり続ける熱は臨界へと達し脳内でぶつりと、何かが焼き切れる音がして。
「……………………かっ」
潰れよばかりに豆を捻り上げ、ドスンと腰骨を砕かんとばかりに密着させ、今日一番の熱を送り込んだ。
「――――――ッッ?!?!」
月見はパクパクと口を開閉させ、全身を硬直させた後。
「ぁぐ…ぎぃ……」
倒れた。
その拍子にぬぽりとものが外れる。
捲れ上がり、赤く充血した穴からゴポッと注ぎ込んだものが溢れた。
それは痛々しく、そしてまた『そそられる』光景。
俺はそれを眺め、この夢はいつ醒めるのだろうと考えながら、月見へとまた手を伸ばした。


「う、うわぁ……」
そんな様子を雪紐は襖の隙間から覗き見ていた。
「ちょ、ちょっと待て! 不浄の穴を貫くだけじゃなく……うわ…意識も無い相手をああも…」
その頬は熱気に当てられたのか上気し、目の前の情事に釘付けである。
「ひぇぇ…人の子の欲求はすごいな…。
月見に適当に聞き及んだ知識を話した結果がこれか…」
ボソボソと喋る言葉は湧き上がる羞恥を紛らわすためか。
「む? どうしたのだ? 月見を置いて…こっち…に?」
ガラリ。
襖が開かれる。
「ひっ!?」
思わずペタリと尻餅を着いてしまった雪紐の眼前にいるの当然ながら、さきほどまで狂ったように月見を犯していた男。
「な、なんだ! いや、覗き見るつもりはなかったんだがっ!! その、なっ! 邪魔してわるかったっ」
あたふたと逃げようとして、若干腰が抜けて逃げれぬ雪紐を見下ろしながら。
「……どうせ夢だしな」
ポツリと呟きがもれた。
「へ?」
静かに雪紐の腕が掴まれ。
「ひぃ! な、なにをっ! は、離せっ!」
「そ、そこは入れる場所じゃな――っ!!」
「ぃぃいいいっ!!」
乱れる夜は、月に照らされ見守られていた。


ありえないほどだるい昼下がり。
俺はテーブルに突っ伏していた。
朝から全身を巡る抗いがたい倦怠感と疲労感。
フルマラソンを全力疾走で走りきった後の翌日のような感覚。
なんとか昼の部を終わらせたが、それで力尽きてしまった。
「な、なんでこんなに疲れているんだ……」
昨日はやたらめったら月見の滋養強壮料理を食べたはずなのに。
ふと、視線を向けるとそっと冷蔵庫を開けようとしている雪紐が見えた。
朝から顔を見なかったが、どうしたのだろう。
「お早う」
声をかけると、びくっ! と雪紐が直立し後ろの棚にぶつかる。
「いひゃっ!?」
するとお尻を押さえて雪紐が跳ね、近くにあった調理器具を巻き込み転んだ。
「お、おい! 大丈夫か!」
倦怠感を振り切り立ち上がると、慌てて駆け寄る。
そこにはお尻を押さえながら一升瓶を持っている雪紐がいた。
「ほら、気をつけて」
また酒かと思いながらも、手を差し伸べると。
「っ!!」
じりっと雪紐は下がる。
「?」
そのまま下がり距離を取ると、ぱっと立ち上がり。
「け、ケダモノめ!」
そんな言葉を残し、雪紐は居間へと走り去っていった。
「な、なんなんだ?」
首を傾げる俺は戻ろうとして、目の前のものにぶつかりそうになる。
「おっと危ないぞ月見」
「そちらが不注意なのじゃ陽司」
そこには見慣れたウサ耳妖怪がいた。
月見は腰に手を当てると、ぷんすかと擬音がつきそうな怒り方する。
「それに今日は身が入っとらんぞ! そんな様子では客足はあっという間に遠のいていくのじゃ! わかっておるか!」
いつもどうりのその姿になぜか理不尽を感じつつ説教を聞き流す。
多大な疲労と平和を感じながら月見を眺めていると、手首に縄のような痣を見つけ。
「これ! 聞いておるのか!」
「あー、はいはい。
聞いている聞いてる」
結局、日常は何事もなく続いていく。


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