「十五夜」   作:匿名希望




「いい月じゃ。どうじゃ晩酌に付き合ってくれんかの?」

きっかけはそんな言葉だったと思う。
庭を満月の光が照らし、もうそんな時期なのか鈴虫が音を奏でている。
初夏に似合わぬ涼やかな風が肌を撫でる中、縁側へ腰掛け手にしたお猪口を傾けた。
「……ふぅ」
するりと胃に落ちる酒を意識することも無く、徳利から次を注ごうとして。
「とりゃ」
横から奪われる。
「いくら若いとはいえ、流し込むように呑むなど風情がないの」
座っている俺を、上から覗き込むようにしてそいつは言う。
「つまむ物が無いんだからしょうがないだろ」
閉店ついでに、店の余り物を持ってこようとしたら無粋と言われた。
「やれやれ、しょうがない」
首を振ると俺の隣に座り、自分のお猪口に酒を注ぎ。
「美味い酒の楽しみ方はの」
ちびり
舐めるように酒を含むと目を閉じた。
鳴り響く虫の音に聞きほれるように耳が動き、顔を上げる。
そしてゆっくりと目を開け、くっきりと浮かぶ丸い月を見ながら、こくりと白い喉が艶めかしく動いた。
その白い喉が動く様に俺は目を離せず、妙に艶めかしく映った。
「とな。こうやって、周りを肴にして呑むのじゃ」
もう酒が回ったのか薄く紅に染まった頬で笑いかけられ、いつもは感じない『色気』を感じ取り慌てて目を逸らした。
「はいはい。さすが年の功だな。呑み方が爺婆臭い」
ついでに徳利を取り返してお猪口に注ぐなり、またすぐに空ける。
「これ。またそんな呑み方を」
しかたないと言うそいつから顔を背けた。
こいつはいつもそうだ。ときたま無防備に晒される色で、俺をかき乱す。
「とっくに慣れたと思ったのにな……」
動揺か興奮か、どちらにしろ揺らいだ手元は注ごうとした徳利の口を揺らがせた。
「ととっ」
逸れた口から溢れた酒が手と袖を濡らす。
「うわ、やった……」
溜息を吐いて布巾でも持ってこようと立ち上がりると。
「?」
ついと袖を引かれた。
当然ながら相手は一人。
「なんだ? 早く拭きたいんだが」
罰の悪さもあり少し邪険にする俺に、そいつは静かに笑いかける。
「それはもったいないのう……」
何をと問いかける間もなく、そいつは袖に口をつけた。
「じゅっ……ちゅ」
布に染みた液体を吸い取る音。
目の前の行動に脳が付いていかない。
「ぢゅっちゅ……ん」
指へぬるりと『熱いもの』が這った時、ようやく脳が現状を認識し俺は手を奪うようにそれから引き抜いた。
「どうしたのかえ?」
どうしたもこうしたもない! もう酔ったのか!
そう叫ぼうとして、呂律が回っていないことに気が付く。
世界が歪んでいた。頭がクラクラして足元が覚束ない。
「どうしたのじゃ? もう、酔ったのかえ? あんな呑み方をするからじゃ」
その幼い顔でくすくす笑うと、膝と手を着き徳利を片手に這い寄ってくる。
俺はそれを待つこともなく酷い眩暈に尻餅をついた。
「ほれ」
そいつは徳利に直接口をつけ呷ると、のそりと俺に覆いかぶさる。
「んっんむっ!?」
口を塞がれ舌で唇を割り開かれ、その隙間に唾液と混ざったものを流し込まれた。
離れ際に繋がった糸が切れる。
吐息が聞こえる距離。口端から垂れた雫を舐め取るとそいつは笑う。
「これも酒の楽しみ方の一つじゃ」
覚束ない手で押し退けようと目を凝らした先にあったのは、肌蹴た着物、月光に浮かぶ白い、白い裸体。
揺れる視界に広がる見覚えのある童女のような顔。だがその表情だけが違う。
月と同じく輝く赤い瞳に覗き込まれ、眩暈がさらに酷くなる。
……赤?
ふと気がつく。
さきほどまで夜を優しく照らしていた満月が、赤く妖しく輝いていることに。
「呑もうぞ。まだ夜は長い」
疑問を解明する暇を与えることなく、そいつは徳利を裸身へと傾けた。
肩から柔らかな肌を這う川ができ、それはなだらかな乳房を下り、わき腹を伝って足の付け根を通り床へと落ちる。
「さあ、どこから呑むかえ?」
「……っ」
手を出しかねている様子を見て、そいつは俺の頭を抱き抱えるように耳元にそろりと囁く。
「――そうじゃの、まずは肩からじゃ」
気がつけば、俺は小さな肩へ口をつけていた。
蒙昧な意識の中、舌を出して張りのある肌から酒気を舐め取る。
乾きかけたものを吸い付くように舐め、自然に下へと下がっていき、鎖骨の窪みに残っていた物を吸い取った。
「っ」
唇にぴくりと震えが伝わるが、それを無視して乳房へといく。
舌を突き出しそのささやかな乳房を避けるように外円をなぞった後、真ん中の突起をわざとかすめる。
「いたずら小僧め」
口調とは裏腹に優しく髪を手で梳かれた。舌は乳房からわき腹。足の付け根、そして湿った場所へと辿りつく。
そこは遮るものはなく、ぷっくりとした柔らかい丘には粘つく蜜が滴っていた。
「もっと近う」
頬を撫でられて誘導される。
息を吸うと濃い女の匂いが充満し、脳内を犯す。
「どうしたのじゃ?」
そいつの手は俺の頬をそっと撫ぜた後、さらに下り。
「酒は最後まで――飲み干さんとの」
くちゃりと、また少女のそれを割り開いた。
「――――」
どこかに残っていた理性がガリガリと削られ音が脳内で響き。
伸ばした舌が、じゅくっと柔らかなそこへと触れる。
「ん」
肌とは違う『柔らかさ』と『潤い』とそして『味』。
もう止まらなかった。
直接口をつけ、滴る『酒』をこそげ取ろうと舌で抉る。
「っあ! んんっ!」
反射的に逃げる腰をしっかと捕まえ逃がさない。
ひたすらに少女の柔肉を貪る。
溢れる蜜を吸い取り、舐め取り、舐めあげ無心に啜った。
いつまでやっていただろう。ふと、体を押され再び尻餅を着くような状態に戻されその行為を中断される。
朦朧とする思考の中、顔を上げるとそいつは顔を寄せてきた。
「もう我慢できんのじゃ」
俺の腹に腰を乗せ、後ろ手にとっくに硬くなったものを布越しに擦られる。
「こちらも……もう、限界じゃろう?」
頬を舐められ、そのまま唇をなぞり繋がった。
「ちゅっ…んふ……ぢゅちゅ」
熱い舌が絡み合う中、その手は器用に動きそれを取り出される。
「んちゅ…ぷあ」
名残惜しそうに舌が引き抜かれた。
ついそれに寂しさを感じたのか、舌を突き出してしまう。
「ふふ……」
そいつは笑いかけると、硬くなったものに腰を押し出し馴染ませるように柔らかい『それ』を擦り付ける。
刺激的な、だが圧倒的に物足りない快楽。
染み出る蜜を満遍なく塗りたくられた頃には、痛みを感じるほどに硬くなっていた。
「もう、いいかの」
そう言うと、そいつは反り立つものの上へ腰を持っていく。
軽く触れ、ねちゃねちゃとかき混ぜるように触れ合わせ。
「――馳走になるぞ」
静かに腰を下ろし始めた。
「ああ……あ、あぁ……っ」
白く小さな体に不釣合いのグロテクスなものが、ずぶずぶと埋まっていく。
「――っあ、はーっはー……」
後少しの余裕を残し、そいつは大きく息を吐いて止まった。
ものの大きさに対して、秘裂が小さすぎるのかぴっちりと痛ましくほどに広がり、端が白くなっている。
「あは…大きすぎて入り切らんの……ん、子宮を、押し上げておる」
慈しむように、ぽっこりと押し上げられた部分を擦った。
その顔は喜悦と愛おしさが混じり、なにかを思い出させようとする。
「――」
日常的な、大事な『何か』が呼び覚まされようとするが。
「今は『無粋なこと』は考えないのが礼儀じゃ」
顔を掴まれ、紅い瞳に覗き込まれた。
「女子(おなご)に失礼じゃろう?」
その瞳の紅に、思考が、理性が、薄らいで、揺らいで、消えていく。
「さあ……儂を呑み干してくれ」
残るのは、下半身から広がる、きつく締め上げられる愉悦。
「あっ…あくっ! ……んあ、あ、あ、あっ」
気が付けばひたすらに腰を振っていた。
俺の上でボールのようにそいつが跳ねる。
「っ! ふあ…いっ! あぁっ! おな、かっ! 壊れっ」
がつがつとただ快楽を求めて、奥へ奥へ突き破ろうと何度も叩き付ける。
「あ゙ぁ゙っ! あ゙ぁぁあああっ!!」
いきなりビクリと痙攣し、元々きつかったそこが急劇に締め付けた。
「あぁぁ……ひっ……ぁぁあ…」
呆けたような顔。口端からつっと涎が伝うが、それを気にする余裕もないのだろう。
「んひっ!?」
だが、俺が止まってやる理由にはならない。
「くぅぁあっ!? まっ! 今いって…まだっ! ひぐっ!?」
きつく握り締めるような穴を強引に突き上げる。
「ぃあっ! やめっ! ぎっ!? あ゙っあ゙っあ゙っあ゙っあ゙っ!!」
連続で絶頂に押し上げられ悲鳴のような声を上がるが構わずに動き続けた。
ただ求めるままに、欲するままに、十数年以上溜め続けていた物を吐き出そうと、目の前の幼い体を壊す勢いで貪る。
「あ゙ぁぁぁ……っ!」
いつからかそいつの抵抗がなくなっていた。
口は開かれたまま微かな嬌声を漏らし、端からだらしなく唾液を垂らす。
虚ろな瞳でガクガクとされるがままに揺れ。
下はときおり思い出したかのように断続的に痙攣し締め付ける。
壊した。
なにか、大事な、守らなければいけない大切なものを。
得も知れぬ背徳間に急劇に高まり、そいつの頭を掴み引き寄せた。
「んんっ! ぢゅっぶっ!?」
強引に舌をねじ込み口内を蹂躙する。
僅かに瞳に光が戻るが、俺はそのまま一際強く子宮へと限界まで高まったものを突き入れた。
「――んぶぅっ!?」
体中の熱をかき集め、渾身を込めて打ち込む感覚。
「っぷあ! ひぎっ! あ゙ぁぁあああっ!!」
がくがくと怖いほど痙攣する体を押さえつけ、一番奥へと一滴たりとも漏らさぬよう溜めに溜めた物を次々と吐き出していく。
「あつっ……ひっ! ひぃ…いぃ…」
そのたびに腕の中の体が痙攣し、それで逃れぬように抱きしめ子宮へと種を送り続ける。
「ん…ぅあっ」
最後の一滴まで注ぎ終わると、隙間の無いはず秘裂との間から収まりきらなかったものが溢れだす。
そして俺は力尽きたように脱力する。
半身を削がれたような喪失感、指先を動かすのすら億劫だった。
すると、胸でぐったりとしていたそいつがノロノロと体を起こす。
まだ繋がった場所へと指を這わすと、溢れ混ざったものを掬いチロリと舐めた。
「……まだ」
その姿に背筋をぞくりと快感が突き抜け、萎えかけたものが徐々に元の硬さを取り戻していく 「まだ……酔い痴れようぞ」
紅く、爛々と輝く月と瞳に見下ろされながら、俺は再び動き出していた。

「……んかっ……お……か……起きんかっ!!」
耳元で騒がれて、俺はたたき起こされる。
「〜っ! なんだ? 朝から騒々しいな」
鈍い頭痛を感じ若干不機嫌に言った。
「そんなこと言っている場合か!」
そいつは耳をピンと立て、怒るように指を指す。
その先には壁にかかった時計があり。
「開店まで一刻もないぞ!」
時計の針はデッドライン(開店20分前)を示していた。
「うぉぉおおお!? 仕込が!! 今日は団体予約があるのにっ!?」
慌てて布団から飛び出す。
「って、仕事着のままだし!」
このまま開店準備をしたいが、衛生上するわけにはいかない。
「早うしろ! それでなくとも朝一の常連が来る頃じゃ!」
「くそぉおっ!! 起こすならもっと早く起こしてくれ!」
「甘えるでない! 童でもあるまいに! 起こしてもらっただけありがたいと思え!」
どたばたと着替え、最低限の身だしなみを整える。
「なんか頭痛がすごいんだが! 昨日なんかあったか?」
ズキズキとする頭を軽く振った。全体的に体もだるい。
「儂が晩酌に誘ったというのに、先に呑んで先に潰れておったよ! 布団まで連れてくるのに苦労したわ!」
「そうか……」
なにか大切な物を穢すような悪夢を見た気がしたのだが。
「まだか! もう客が店の前におるぞ!」
そんな考えも非常な現実に流されていく。
「考えるのは後だ!」
とりあえず二日酔いとして問題を棚上げし調理場へ急ぐ。
客の対応へ行くそいつと擦れ違い。
「また…次の十五夜でな陽司」
なにかを呟かれた気がした。
「月見? なにか言ったか?」
「何も言うておらんぞ。それより止まっとらんと早うせい! 店を開けるぞ!」
「へいへい!」
いつもより慌しいが、今日もいつもの日常が始まる。


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