古竜属に分類される妖怪。
竹取物語が書かれた時代から存在が確認されており、月見の数倍は生きていると思われる。
古くは天候を左右する程の大きな力を持っていたが、時代の流れによりその力の大半は失われた。
その力の行使には宝具「竜の首の玉」を用いる。
過去に5色あった玉は力の消失と共に消え、「晴天」を司る空色の玉しか残っていない。
生物学上は爬虫類であり、体温調節はあまり上手い方ではない。
処暑の頃より白葉家に居候するのが通例であるが、わざわざ豪雪地帯を選択する理由とは、
盟友である月見の存在・妖怪に開けた居住環境・食堂故に食物に困らないというメリットによる。
そのお礼として、買い出し・家事全般をこなしてくれるが外出範囲は暖の取れる商店街内に限られる。
また、春分頃になり暖かい日が続くようになると元の住処である周防の岩国に戻る。
長寿妖怪特有の奔放さがあり、主に貞操に関しては無頓着。
(もはやそれぐらいしか楽しみが残っていないのかもしれない)
ただ、彼女が竜である事を忘れて逆鱗に触れたりすると手痛い報復が待っている。
胡散臭い事に代わりは無く、事後「何かを奪われていないか」を確認する必要はあるだろう。
月見食堂の向かいにある洋食屋・サルジニアの店主。
有名ホテルの総料理長であったが、55歳の時に不況のあおりを受けて依願早期退職。
退職金を元手に個人経営のレストランをオープンさせようと考えていたが、
条件に合う立地が無く路頭に迷っていた所を月見に勧誘され商店街に店を構える事を決意した。
店の名前をサルジニアとしたのは、イタリア料理を学ぶ際に飛ばされた島に対する感謝の意を含む。
市内でも有数の料理の腕前で、味にうるさい住人の舌をうならせている。
洋食屋・サルジニアの看板娘。
引っ込み思案で調理補助をしている事が多いため、ホールの仕事を行う機会は少なく、
月見食堂・サルジニアの両方に通う客にとっては彼女の方がレアであると認識されている。
特に力の強い妖怪ではなかったが、半ば無意識に人に取り入りながら淘汰を潜り抜け、
篤蔵に拾われた時も空腹によって力尽きかけていた所を救われたものである。
彼女に名をつけた(*1)のは篤蔵で、七草の1つ「菘(すずな)」にちなんで「凉梛」と名付けられた。
月見食堂に良く来店する女子大生。
何でも大学生になってから、店を発掘する事の楽しみを知ったとか。
明朗活発でとにかく喋るし動く。陽司が個人的に雇ってみたいアルバイト1号。
フードアナリスト。取引先は「主婦のお供社」など。
月見食堂には先代からの縁で通っているだけで、取材対象として扱う事はあまり無い。
陽司の料理に関しては「言するにも値しない」という厳しい評価ではあるが、
先代の味に心酔しているように彼自身の成長を強く望んでいる。
大食いキングとして知られ、市内の大食いイベントでは既に無敵。
常人の何倍も食べる事で陽司の綿密な計画を狂わせる諸悪の根源ではあるが、
食材の廃棄を狙って来店しているため、人間ゴミ収集車として貢献してくれている。
質より量が信条で、とにかく食べる事で己を満たす事ができる幸せな人である。
商店街の西側に位置する古河診療所を経営する町医者。
先々代からの常連で、水曜(休診日)の昼に必ず月見食堂に訪れる。
割と寡黙で多くを語らない人であるが、医者としての腕は月見のお墨付きである。
昔とは人が変わったとは月見の弁。その真偽は商店街の者ですら知る者は少ない。
注釈
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[1]妖怪の名付け親
妖怪は基本的に名無しであり、通名として徐々に定着していくケースが殆どである。
そのため、妖怪大淘汰が行われる以前は圧倒的に無名の妖怪が多数存在した。
人間による妖怪の命名は存在条件の「特定の人間との契約」に該当し、
それは妖怪・人間のどちらかが契約解除の宣言をしない限りは契約者が死ぬまで続く。
凉梛が力の無い妖怪ながら生き永らえてきた理由はここに起因するものであり、
月見とは異なる方法で現世に留まっている。